絵コラム

日常の事や萌えを語ったり漫画を連載したり…

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幻創夢伝(番外編) 海底の魔物

今日は幻創夢伝の番外編をアップします。
竜の兄弟全員を活躍させた話が書きたい!という想いとともに、短編を創作しました。
黒竜中心の活躍となりますが、兄弟たちそれぞれの特徴が少しは分かるかなと!
原稿用紙15枚分のSSになりますが、お付き合い頂ける方は続きからご覧下さい。


【幻創夢伝/番外編】

海底の魔物

 地界のとある海の上空で、黒と白の二匹の竜が並んで泳いでいた。水平線の彼方では、間もなく太陽が姿を消そうとしている。
「綺麗な夕日だな。海も穏やかだし、平和そのものだ」
 白竜がつぶやくと、
「この地区の海が荒れやすいだなんて、とても信じられないね」
 と、黒竜が受け答える。白竜はふうとため息を吐いた。
「なあ、このやりとり一体何度目? いつまでこんな事続けるの?」
「さあ? 青竜兄さんの気が済むまでじゃない?」

 二匹の竜はそんな会話をしながら、空の上をゆらゆらと漂っていた。
 白竜と黒竜は、青竜の命でこの海の上空を毎日のように偵察をしている。青竜が言うには、この辺りの海はなぜか荒れやすく、船が何隻も沈められたとの事だった。海の統治は、青竜を始めとする竜王たちの仕事で、この場所で度々海難事故が起こる原因を探ってくるようにとの事だった。
 が、しかし、ここ数日ずっと観察しているものの、海が荒れる様子はなく、白竜と黒竜はすっかりこの任務に飽きてしまっていた。
「見て、向こうから船が来るよ」
 黒竜が東の海からやってくる大きな船を見つけて白竜に合図した。
「ああ、本当だ。実際に船が通るところを確認したのは始めてだな」
 白竜も船の方を振り替える。
「あの船、沈むかなあ?」
「まさか。こんな穏やかな海で……?」
 白竜がここまで言うと、太陽が完全に水平線の下へと沈み込み、辺りが暗くなった。と、同時に、びゅうと風が起こる。 
「急に風が強くなってきたね」
 黒竜がつぶやくと間もなくして、ピシャンと稲妻が鳴り響き、強い雨が降り始める。
「おいおい、誰がこんな雨雲を呼んだんだ?」
 白竜は何処からともなく急に現れた雨雲を睨んだ。
「僕じゃないよ」
「俺でもないし、兄貴たちでもないだろうな」
「見て、白竜! 貴重な瞬間が見られるかも!」
「貴重な瞬間?」
 白竜が海に目をやると、船が今にも転覆しそうになっていた。
「おい! 本当に沈むぞ!!」
「あの船は沢山人が乗ってるみたいだし、そうなったら全員死んじゃうかな」
「助けなきゃ!」
「やめなよ。関わらない方がいいって」
 地界へ向かって急降下しかかった白竜を、黒竜が呼び止める。
「何でだよ」
「大勢の魂がいっせいに天に召される現象って、とても綺麗なんだよ。それは、滅多に見られるものじゃないし……」
「またそういうおかしな事を言って……!! いいから行くぞ! お前も手伝え!」
 そう言うと白竜は海上を漂う船に向かって急降下した。黒竜も渋々と後に続く。
「で、どうするの?」
 海中に潜り込んだ黒竜は、少し先を泳ぐ白竜に尋ねた。
「あそこに小さな島があるだろう。岸辺まで運ぼう」
「了解」
 白竜と黒竜は海中から船を押し、島の方へと誘導した。途中、黒竜は海底に沈んでいる岩山の隙間から、何か黒い靄のようなものが立ち上っていることに気が付いた。
「ねえ、白竜、何か変だよ?」
「おい、しっかり支えろよ。船が傾く」
 白竜は船の誘導に夢中で気が付いていない様子だ。黒竜はじいっと海底を凝視した。
 やがて船は島の岸辺へとたどり着いた。船内にいた人々は島の中へと次々と避難を始める。
「よし、これでいい」
 白竜がほっと一息ついた時だった。海底から立ち上っていた黒い靄が突然ドオっと大きく膨らみあがり、それはまるで化け物さながらに襲いかかる様にして白竜と黒竜の元へと迫ってきた。
「わあ!」
 黒竜は直感でそれが危険なものだと判断し、靄から素早く身をかわした

「何?」
 白竜は、海底の方へ振り向いた瞬間に、完全に靄に飲み込まれた。靄はしばらくの間白竜を完全に包み込んだあと、やがて少しずつその姿を変えていく。
「白竜、大丈夫?」
「イテテテ……! どうなってんだ!?」
 靄は紐状に変形して、白竜の身体にぐるぐると巻き付いていた。
「ああ、なんていうか、その、靄が白竜の身体を締め付けてる……のかな」
「状況の説明はいいから、早く助けろ!」
「分かった、今行く!」
 黒竜が白竜の元へと近づき、その身体を捕らえようとした瞬間に、白竜の身体が海底の方へとぐいっと引き込まれた。靄が白竜の身体を捕らえたまま、海底の岩山の方へと逆戻りを始めたのだ。
「待ってよ白竜!」
 黒竜は慌てて後を追ったが、そのスピードに追いつけない。
「お、俺の意志じゃねえぇぇぇ……」
 白竜はあっという間に海底へと姿を消してしまった。黒竜は急いで後を追ったが、海底には岩山があるだけで、白竜の姿はない。先ほど黒い靄が立ち上っていた場所は、大きな岩石でぴったりと塞がれており、隙間が無くなっていた。
「この中にいるのかな」
 黒竜は岩石を押したり引いたりしてみたが、びくとも動かない。
「ダメだ、僕じゃどうにも出来ない……兄さんたちに知らせよう」
 黒竜は海上へと引き返し、そのまま水晶宮へと向かった。

***

「急いで向かいますよ」
 黒竜から事の顛末を聞いた青竜は、すぐさま水晶宮を飛び出した。紅竜と黒竜も一緒に続く。
「一体何なんだ、その黒い靄ってやつは……」
 並んで空を泳ぎながら紅竜が訝しげに呟いた。
「妖魔かもしれませんね。あそこには何かあると思っていたのです。ところであなた達、それ以上早く走れないのですか?」
 青竜が焦れったそうに弟達の方を振り返る。
「これが精一杯のスピードだよ」
 兄弟の中で一番身体が大きい紅竜は、走るスピードとなると一番遅いのだ。
「休憩しようよ。疲れちゃった。僕だけ往復してるんだよ?」
「おいおい黒竜、少なくとも今休んでる場合じゃないってのは分かってるよな?」
「そうだけど……」
「仕方ないですね。二人とも、私の背中につかまりなさい」
「やったあ!」
「う……嫌な予感」
 紅竜と黒竜は、人の姿をとると、青竜の背中に飛び乗った。
「さあ、行きますよ。しっかりつかまってて下さいね」
 そう言うと青竜は、一気にスピードをあげた。
「わぁ! すごいや兄さん!!」
「うげええぇぇ……目が回る!!」
 黒竜はきゃっきゃとはしゃいだが、紅竜はみるみるうちに顔色が悪くなった。

 青竜達は、あっという間に例の海底の岩山へとたどり着いた。
「あー楽しかった♪」
 黒竜は上機嫌で青竜の背中から飛び降りた。
「頭がクラクラする……」
 紅竜は脱力しながら海中を漂っている。
「これが例の、岩石ですね」
 青竜もまた人の形をとると、まずは岩を確認する様にぺたぺたと触ってから、黒竜がしたのと同じように岩を押したり引いたりしてみた。やはりびくともしない。
「これは、かなり頑丈ですね……」
「竜身になって、みんなで体当たりしてみたらどうかな?」
 黒竜が提案する。
「そんな事をしたら、中にいる白竜が危険ですよ」
 青竜もお手上げの様子である。
「幻術か何かで封じてあるのかな?」
 黒竜は首をひねった。
「この岩か?」
 ようやく気分が治ったらしい紅竜がやってきて、トンと岩石を押した。グラリと、その岩が動く。
「そんなに、頑丈か?」
 そう言いながら、ひょいと岩を持ち上げる。ゴロリと岩が海底に落ち、ゆっくりと泥が巻き上がった。
「……流石ですね」
「やるじゃん、馬鹿力!!」
「この程度なら大した事ないぜ」
 岩が抜け落ちると、岩山は洞窟のように入り口が開いた状態となった。
「では、入りましょう」
 青竜が先頭に立ち、三人は露わになった洞窟の入り口へと入って行った。
「ねえ見て! ここって思ってたよりずっと素敵な場所かもしれない!」
 洞窟へ入ると黒竜は目を輝かせた。そこには、おびただしい数の白骨が転がっていたのだ。
「お前好みの場所かもな」
「勝手に触ってはいけませんよ」
 兄たちはそっけない返事を返す。元より黒竜の趣味には慣れきっているし、それよりもこの先、どんな魔物が潜んでいるかが気がかりなのだ。
「白竜だったら、もうちょっと罵ってくれるんだけどなぁ」
 黒竜が少しションボリしながら呟くと、流石に紅竜が吹き出した。
「お前、罵られたいの?」
「ゴシック趣味な上にマゾっ気まであったとは知りませんでした」
 青竜も表情を変えないままコメントをする。
「そういう訳じゃないよ。ただ、ちょっと面白味がないなって思っただけ」

 その頃洞窟の奥では、白竜が黒い靄に取り囲まれていた。
「なあ、いい加減ここから出してくれないかなぁ……」
 白竜が呟くと
「ダメよ」
 と声が響く。
「ここで私とずっと一緒にいましょう」
 洞窟の最深部からゆっくりと女が現れた。長い髪がゆらゆらと揺れている。
「今日はついてるわ。白竜を捕らえる事ができるなんて。百人の魂よりも価値があるわね」
 女はそう言うと、愛おしそうに白竜の頬を撫でる。白竜はぶるっと身震いをした。
「俺をどうしたいわけ?」
「別に何も。ただ、ここにいてくれればいいわ」
 女は白竜に直接危害を加える気はない様である。しかし、この場にずっと留まれと言うのは、受け入れ難い要求だ。
「あいにくだけど、化け物と一緒に暮らす趣味はないね」
 吐き捨てるように白竜が言うと
「モテモテだな、色男」
 と、聞き慣れた声が響いた。
「紅竜!」
 白竜の視界に、先ほどの声の主である紅竜を始めとする三人の兄弟達が目に入り、その顔に安堵の表情が浮かんだ。
「さてはあなたが犯人ですね」
 青竜が女を睨みながら歩み寄ると、黒い靄の一部が白竜の周りから分離し、青竜の前へと立ちはだかった。
「気を付けて! そいつに掴まるとやっかいだよ!」
 白竜が叫ぶ。青竜の背後から、黒竜が靄をじっと凝視した。
「おやおや、竜王達が揃って来てくれるなんて、今日はますますついてるわ。まとめて捕らえてあげましょう」
 女がにやにやと笑いながら、ゆっくりと近づいて来た。
「白竜を返してもらいましょうか」
 青竜が刀を抜く。靄を凪払うように刀を振るうと、黒竜が叫んだ。
「待って、青竜! それはいけない!」
「どう言うことです?」
「よく見て! 僕も今気がついたんだけど、この靄は、人の魂だ」
「何だって!?」
 紅竜も靄に近づいて、青竜と一緒にそれを凝視ずる。黒く薄汚れてはいるが、それは確かに魂のようだった。
「本当だ……」
「おびただしい数ですね」
「きっと入り口のあれだね」
 黒竜は、先ほどの白骨のことを言っている。
「魂だと言うなら、黒竜の出番ですね」
 青竜は刀を納めた。
「うん」
 黒竜は一つ頷くと靄の前へと歩み寄る。
「僕なら、君たちを黄泉の国へと案内してあげられる」
 黒竜がそう言うと、一斉に黒竜の周りへ魂が集まってくる。白竜はようやく身体が自由になり、兄弟達の元へと走り寄った。
「行き場を失って、迷子になってただけだったんだね」
 黒竜は魂を抱き抱える様に手を広げた。
「ちょっと待ちなさい! その子達を連れて行かないで!!」
 女が慌てて叫んだ。
「君がこの子達を集めたんだよね? どうしてそんな事を?」
 黒竜が女に言葉を投げる。
「……淋しかったのよ。こんな岩山の奥に閉じこめられて、誰にも気がついてもらえない。そんな孤独、あなたに分かる?」
「えーと、つまりこう言うことかな?」
 白竜が確認するように話し始めた。
「そもそも最初にここで海難事故に遭って命を落としたのが君で、その時にこの場所に遺体が流されたと」
 女は黙って頷いた。
「で、誰にも見つけてもらえず、たった一人でここにいるのが淋しくて、仲間欲しさにこの海を通る船を沈めてたってわけだな」
「ええ、そうよ。だって、淋しかったんだもの」
 女は開き直ったように言った。
「だからって、こんな事して良い訳ないでしょう」
 青竜が責めるように言った。
「でも、気持ちは満たされなかったでしょう?」
 対して黒竜は穏やかに問いかける。女は少し考えてからこう答えた。
「魂が足りなかったのよ。もっとたくさん集めればきっと……」
「それはどうかな。君は本当は、仲間が欲しかった訳じゃないでしょう。現に、魂をいくら集めても満足出来なかった」
「じゃあ、一体何だったんだ!?」
 白竜が疑問を口にすると、いつの間にそこにいたのか、洞窟の再深部から紅竜が出てきて言った。
「……見つけて欲しかったって事かな?」
 そう言って、腕の中に抱えていたものを女に差し出した。
「ひいっ!」
 白竜が悲鳴をあげる。それは髑髏だった。
「さすが紅竜兄さん!」
 黒竜はにっこりと微笑んだ。
「ああ、それは……」
 女は髑髏を受け取ると、その頬に涙が伝う。間もなくその身体が透明になり、完全に消え失せると、髑髏だけがゆっくりと漂いながら落ちて行った。
「良かった。これで彼女も一緒に連れて行ける」
 黒竜の周りを取り巻く魂の中に、新たに現れたもう一つの魂が加わった。女もまた、元々はただの人の魂だったのだ。それが時に大きな悲しみや恨みなどの感情を持って特殊な力を手にした妖魔へと変化する事がある。妖魔のままでは黄泉の国へは行けないのだが、こうして浄化されて再び魂へと戻れれば、その限りではない。
「よくやってくれました」
 青竜もほっと胸をなで下ろした。妖魔とはいえ、切って捨てるよりは、こうして浄化する事が出来れば一番良い。
「それじゃ、僕は一仕事してくるね!」
 黒竜はそう言うと魂の大群を率いて海面へと上昇していった。魂は一度天界を経由してから黄泉の国へと旅立つのだ。

 その晩、光の大群が一挙に空へと昇っていった。

「確かに、これは見事な光景だなぁ……」
 白竜は空へと昇っていく光の大群を見上げながら、ふと黒竜の言葉を思い出していた。
 この一件以来、その地区の海で海難事故が起こることは滅多に無くなった。ついでに、黒竜の髑髏コレクションに新たな一品が加わった。
「綺麗な形をしてるよねぇ……」
 髑髏を眺めながらしみじみと黒竜が呟いた。
「それってまさか、あの女のやつか?」
 白竜が顔をしかめながら言った。
「大丈夫だよ。ちゃんと本人から了承を取ってあるから」
「うげえ……。本当、お前の趣味は理解出来ないよ」
 そう言って白竜は黒竜の部屋を後にした。

end

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