絵コラム

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幻創夢伝 第3章【遼郭】

久々に幻創夢伝更新します。
今日から新章スタート。遼郭編が始まります。
いきなり新キャラ目線で始まりますが、すぐに元の登場人物たちとの話に繋がります。
では、続きからどうぞ



幻創夢伝

第3章【遼郭】

1.夢の町で

  石畳の道に、ずらりと並んだ煉瓦造りの歴史ある建物たち。中には複雑な彫刻や装飾が施されている建物も珍しくない。美しい建物が立ち並ぶ遼郭の町は、今日も多くの人で賑わっていた。
 この町の市場には食料品から雑貨まで、それもまるで世界中から取りそろえたかの様に、ありとあらゆる珍しい品々が毎日ずらりと並び、それに加えて、呉服、履き物、金物に武器防具…と、数え切れないくらい沢山の専門店もある。その専門店街の前の道を抜けると、ふいに広がる大きな広場のど真ん中に、堂々と現れる大きな建物は劇場になっていて、この町が誇る世界最高の歌劇を観る事が出来る夢の場所となっている。
 あたしの名前は朱李。ここの歌劇団で、俳優として働いている。
 すらりとしたスタイルの良いボディに、美しい顔立ち。そして、それに負けないくらい美しい歌声を持っている。よくもまあ、自分自身の事をそんな風に言えるもんだと思うだろうけど、自信を持って自分の事をそう言えちゃうのは、それらがすべてあたし自身の努力で得たものだからだ。
 何でも手に入る夢の町、遼郭。
 ここはそう思われているけれど、この町に住む人間は、主に二種類存在した。

 成功した者と、そうでない者。

 前者は富と名声を手に入れ、豊かに暮らす事が出来る。後者は貧困に喘ぎながらこの町のいわゆる裏側でひっそりと生活するか、そうでなきゃ町を出る羽目になるのだった。
 あたしは、成功者になりたかった。

劇場を出ると、あたしは石畳の道を駆け抜けた。片手にはチケットを手に持っている。来週から、うちの劇場で新しく公開予定の演劇のチケットだ。この街で長く語り継がれている、昔々の物語。悲劇の王妃様の物語で、演劇の中でも人気の高い演目の一つだ。それを、どうしても見に来てほしい人がいた。
 息が途切れ途切れになってもかまわずに、あたしはスピードを緩めることなく走り続けた。
 主演の王妃様の役は、あたしが演じる予定になっている。あたしが主演に抜擢されたのは、初めてのことだった。
 大通りから路地裏に入り込むと、古い小さな小料理屋の裏口へとたどり着いた。あたしは裏口をノックすると、ほぼ同時にドアを開けた。
「蘭! 蘭はいる?」
「朱李!」
 あたしの呼びかけに、すぐに明るい声が返ってきた。
 蘭はあたしと同い年の女の子で、小柄だけれど、くりくりの目とちょこんとした上品な口元の持ち主で、とても愛らしい子だ。あたしと同じ劇場で働いていて同期で大親友。だけど、彼女は小柄であることと、声が小さいことなどでなかなか役がもらえずに、今は劇場での仕事よりもこの小料理屋で働いている事の方が多かった。
「元気そうね! 実は大ニュースがあるの!」
 あたしがそう言うと、蘭も
「実は私も、朱李に伝えなきゃいけない事があるの」
 と言った。深刻な顔をしている。一体何があったのだろう? あたしはひとまず、先に話を聞くことにした。
「どうしたの?」
 蘭の口から出た言葉は、あたしにとって受け入れがたいものだった。
「私、今日限りでこの街を出ることにしたの」
「え、うそ……うそでしょ!?」
 蘭は申し訳なさそうに首を振る。
「だって、役者の仕事だってまだこれからなのに……!!」
「有り難う。でも、そう言ってくれるのは朱李だけよ。私、才能ないもん」
「そんな事……!!」
「いいの、もう。それに私……」
 そう言って蘭は少し照れくさそうに言った。
「……何?」
「縁談が来てるの。田舎の地元からだけど」
 ……ああ、そういう事。
 同じ女として、本来ここは喜んであげるべき所なのかもしれない。だけど、役者仲間としては素直に喜んでいられない。あたしは蘭に白けた目を向けていた。
「お母さんが持ってきてくれた縁談なんだけど、結構良いお家柄の人なのよ? こんな良い話、なかなか無いし……」
「何それ」
 そんな話、聞きたくない。あたしは蘭の言葉を遮った。
「あんた役者として成功したいんじゃなかったの?」
「だから、それは……」
「ふざけんな! 結婚に逃げてんじゃねーよっ!」
 あたしは思いっきり蘭に怒鳴りつけた。蘭は泣き出しそうな顔をしていたが、あたしは構わずに蘭に背を向けると、裏口を出て乱暴にドアを閉めた。




 
 

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