絵コラム

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幻想夢伝【番外編】 恋は思案の外5

番外編、今日で完結です。

次回からまたぼちぼち本編に戻りますよー。

前回→恋は思案の外4

幻創夢伝(番外編)

恋は思案の外



 麒麟と紅竜が再会したのはそれから約ひと月後の事だった。そこは、最初にふたりが出会った場所と同じ、水晶宮の畔だった。

「紅竜さん!」
 麒麟が呼びかけ、紅竜が振り向く。目が合うと、紅竜は少し決まりが悪そうな顔をしながらぺこりと頭を下げた。
「この前は、すまなかったね。――今日は兄貴に会いに?」
「いえ、あなたに会いに来ました」
「そう……て、え?」
 自分に一体何の用事があるというのかと、紅竜は不思議そうな顔をする。
「誤解を解きたくて……。私は青竜さんに対して特別好意を抱いている訳ではないのですよ」
「でも、あの時は兄貴に渡す物を頑なに俺に預けようとしなかったし、てっきり兄貴に会うための口実を作ってきたのかと……」
「いえ、あの時は……」
 麒麟は少し困った顔をする。
「青竜さんから借りた本を返しに来たのですけど、内容がその……自己啓発の本でして……」
「自己啓発……?」
「なんとなく本を見られるのが恥ずかしかったのです……」
 麒麟は少し赤面しながら言った。
「うちにそんな本があったのか……」
「水晶宮には、ずいぶん沢山の本が置いてあるみたいですね」
「図書館が開けるんじゃないかってくらいあるよ」
 紅竜が苦笑する。本は主に青竜と黒竜が仕入れている様だが、水晶宮には沢山の本が並んでいる図書部屋があり、紅竜も昔は散々そこで本を読まされたものだった。
「よく仕事の相談に乗ってもらってたでしょう? その流れで貸していただく事になったのです。前向きに生きる事がテーマの本で、大変参考になりましたよ」
 紅竜はそんな事で仕事の悩みが解決できるのか少し疑問に思ったが、今はそれよりも確認したい事がある。
「それはともかく、そもそも頻繁に兄貴に相談してたのはそれだけ兄貴に好意を寄せてたからじゃないの?」
「いえ、あれは皇大御神様の計らいでもあって……。悩んでる私の相談役を大御神様が青竜に命じたのですよ」
「そういう事だったのか。……じゃあ、俺の勘違い?」
「ええ」
 麒麟は頷いた。
「なんだ……」
 紅竜はほっとため息をひとつ吐くと、それから笑い出す。
「ははは、そうだったのか」
 麒麟も一緒にクスクスと笑う。それからこう言った。
「あの時は、有難うございました」
「……え?」
「嬉しかったです。その、あなたの……」
 麒麟は頬を紅潮させながらそっとつぶやいた
「愛の告白」
「あの時の……!!」
 紅竜は思い出して赤面したが、ふと真顔になると、もう一度聞き返した。
「……今、嬉しかったって?」
「ええ」
 麒麟はにこにこ笑っている。紅竜は、麒麟の表情を観察する様にじっと見つめた。その言葉を素直に受け取って良いのか分からなかった。
「とても嬉しかったのだけど、一つだけ言わせてほしい事があるの」
「何?」
「あなたはあの時、青竜さんの方が自分よりも数万倍素晴らしい人だって言っていたけど、そんな事ないと思うわ」
「いいって、そんなお世辞」
「お世辞じゃなくてよ」
 麒麟は真剣な眼差しで紅竜を見つめている。
「あなたは自分が思っているよりもずっと素敵な人よ」
 そう言うと麒麟は紅竜に近づいて行き、もたれかかるようにして紅竜の胸に顔を埋めた。
「ご迷惑じゃなければ、あなたの傍に居させてください」
「め……迷惑な訳ないじゃないですか!!」
 紅竜は麒麟の背中にしっかりと腕を回した。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 そう言ってしばらく互いにきつく抱きしめあった後、ふたりはそっと唇を重ねた。


 ふたりは水晶宮へと続く長い回廊を、手を繋ぎながら並んで歩いた。
「ねえ紅竜さん」
「紅竜でいいよ。さん付けなしで」
 紅竜にそう言われて、麒麟は少し照れながらもう一度口を開く。
「では、紅竜」
「何?」
「私の事、初めて会った時から魅かれてたっておっしゃてましたけど、それってひと目見た時からって事ですか?」
 紅竜は最初に麒麟と会った日に思いを巡らせる。
「いや、そうじゃなくて……」
「では、何時から?」
「……そうだな」
 紅竜は少し考えてから、こう答えた。
「君に腕を引っ張られて泉の中に引きずり落とされた瞬間、だと思う」
「まあ……! では、私達きっと、あの時同時に恋に落ちたのだわ」
「君もそうなの?」
「ええ。今思えば」
「じゃあ、あの時俺達が落ちたのは泉の中じゃなかったって事?」
「そうね」
 ふたりは顔を見合わせると一緒に笑った。

 その後、水晶宮の泉に同時に飛び込んだ男女は結ばれるという伝説が生まれたとか生まれなかったとか……。

おしまい。

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